当社グループは、企業理念として「いのちと自然を守り育てる」を掲げ、生物多様性への貢献をマテリアリティの一つとしており、生物多様性の損失を止め、反転させる「ネイチャーポジティブ」を推進しています。
当社の具体的な生物多様性への貢献の取り組みとして、ビオトープの創設が立案され、約2年間の計画・工事期間を経て、2025年3月「クミカ レフュジア菊川」が完成しました。
プロジェクト概要
本ビオトープでは、当社がこれまでの事業活動を通じて培った知見を生かし、戦略的自然再生(Strategic Nature Restoration)を実践していきます。戦略的自然再生とは、過去に損なわれた生態系や自然環境を回復させる施策を総合的に推進することを指します。単に水の流れ・池・草地・林を造成し生き物がやって来ることを促すだけのビオトープではなく、生物の多様性を確保し、自然と共生する社会を実現、地球環境の保全を目指します。
また、施設内の水田では慣行の水稲栽培を行う予定で、希少生物と農薬の共存についてもテーマとし、農薬の正しい理解の促進を図ります。さらに、子どもたちに生物多様性や環境保全について学習してもらう場としても活用し、地域社会への貢献活動も行います。
施設ガイド
魅惑の湿地帯
近年最も減少している環境は、「湿原」と言われています。湿地帯では、希少な植物や隠れている生き物たちを見つけることができます。カキツバタ(5月)、ヘイケボタル(6月)、ホシクサの仲間(9月)など。
癒やしの池
湿原の木道を歩いていくと、せせらぎから流れてきた水たまりが望めます。ミナミメダカ(絶滅危惧Ⅱ類)や運が良ければニホンイシガメ(準絶滅危惧種)に出会えるかもしれません。
タチバナ樹園
静岡県では、柑橘類の栽培が盛んです。ここには日本固有の柑橘であるヤマトタチバナがあります。静岡県のタチバナは、日本の東限にあり、絶滅危惧種Ⅱ類に指定されています。5月に白い可憐な花を愛でることができます。
ホタル舞うせせらぎ
レフュジアの北側に井戸があり、浄化した水がせせらぎとなってレフュジアを巡っています。地域の保護活動グループが、長い間この地域に生息するゲンジボタルの保護活動を実践し、その一部をレフュジアに移植しています。毎年6月にここで光の舞が見られることを期待しています。
加茂の水田
菊川市加茂地区は、菊川とその支流の西方川に囲まれた水田地帯でした。しかし、現在ではバイパス道路が通り、大型の店舗やレストランが軒を連ねる市街地へと変貌してしまいました。ここでは当時の水田地帯を再現し、適切なルールを守り農薬を散布しています。それでもホタルが舞う環境を実証していきます。
遠州の里山
静岡県西部には鍾乳洞があるように、遠州地域は石灰岩の地層が多く、独特な植物相が見られます。この地域特有の植物として、ツゲ(絶滅危惧注目種)の群落、4月にはエンシュウシャクナゲ(絶滅危惧種Ⅱ類)が咲き誇る光景が観察できます。
茶畑と茶草場
大井川西部から掛川、菊川にかけての茶畑では、周囲に自然草地を作り、刈草を茶畑に敷くことで栄養豊かな土壌を作り、味や香りの高い緑茶を育てるサステナブルな農法である茶草場農法が行われてきました。ここでは、2013年にFAO世界農業遺産として認定された茶草場農法のミニ茶畑を体験できます。
なつかしの草原
子どもの頃に走り回った原っぱがここにあります。ススキなどの秋の七草と、そこにいる虫たちが観察できます。
管理棟
円形ドームの管理棟では、レフュジアにいる生き物たちの生態研究をして、希少な生き物たちの保護活動を実施しています。ギャラリーでは、季節ごとに見どころを紹介しています。
名称:クミカ レフュジア菊川
場所:生物科学研究所農薬研究センター隣(静岡県菊川市)
総面積:3,030㎡
- レフュジア[英:refugia]とは、氷河期の時代に広範囲にわたって生物種が絶滅する環境下にあって、局所的に生物が生き残った場所(退避地)を指す。
- 1 魅惑の湿地帯
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(2025年7月29日撮影) 近年最も減少している環境は、「湿原」と言われています。湿地帯では、希少な植物や隠れている生き物たちを見つけることができます。カキツバタ(5月)、ヘイケボタル(6月)、ホシクサの仲間(9月)など。
- 2 癒やしの池
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(2025年8月29日撮影) 湿原の木道を歩いていくと、せせらぎから流れてきた水たまりが望めます。ミナミメダカ(絶滅危惧Ⅱ類)や運が良ければニホンイシガメ(準絶滅危惧種)に出会えるかもしれません。
- 3 タチバナ樹園
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(2025年7月29日撮影) 静岡県では、柑橘類の栽培が盛んです。ここには日本固有の柑橘であるヤマトタチバナがあります。静岡県のタチバナは、日本の東限にあり、絶滅危惧種Ⅱ類に指定されています。5月に白い可憐な花を愛でることができます。
- 4 ホタル舞うせせらぎ
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(2025年7月29日撮影) レフュジアの北側に井戸があり、浄化した水がせせらぎとなってレフュジアを巡っています。地域の保護活動グループが、長い間この地域に生息するゲンジボタルの保護活動を実践し、その一部をレフュジアに移植しています。毎年6月にここで光の舞が見られることを期待しています。
- 5 加茂の水田
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菊川市加茂地区は、菊川とその支流の西方川に囲まれた水田地帯でした。しかし、現在ではバイパス道路が通り、大型の店舗やレストランが軒を連ねる市街地へと変貌してしまいました。ここでは当時の水田地帯を再現し、適切なルールを守り農薬を散布しています。それでもホタルが舞う環境を実証していきます。
- 6 遠州の里山
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(2025年7月29日撮影) 静岡県西部には鍾乳洞があるように、遠州地域は石灰岩の地層が多く、独特な植物相が見られます。この地域特有の植物として、ツゲ(絶滅危惧注目種)の群落、4月にはエンシュウシャクナゲ(絶滅危惧種Ⅱ類)が咲き誇る光景が観察できます。
- 7 茶畑と茶草場
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(2025年7月29日撮影) 大井川西部から掛川、菊川にかけての茶畑では、周囲に自然草地を作り、刈草を茶畑に敷くことで栄養豊かな土壌を作り、味や香りの高い緑茶を育てるサステナブルな農法である茶草場農法が行われてきました。ここでは、2013年にFAO世界農業遺産として認定された茶草場農法のミニ茶畑を体験できます。
- 8 なつかしの草原
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(2025年7月29日撮影) 子どもの頃に走り回った原っぱがここにあります。ススキなどの秋の七草と、そこにいる虫たちが観察できます。
- 9 管理棟
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円形ドームの管理棟では、レフュジアにいる生き物たちの生態研究をして、希少な生き物たちの保護活動を実施しています。ギャラリーでは、季節ごとに見どころを紹介しています。
希少な生物・植物一覧(計画)
昆虫類
ヘイケボタル:コウチュウ目ホタル科
静岡県レッドデータブック記載要注目種
本ビオトープより東方約1.2㎞にある住宅地隣接の休耕田に発生する個体群(環境悪化により減少)を保護・移植。
ゲンジボタル:コウチュウ目ホタル科
流水域に生息する大型のホタル。各地で保護活動が実施され、菊川市内においても発生が認められるが近年急速に減少。
アサギマダラ:チョウ目マダラチョウ科
長距離移動をする蝶として知られる。市内でも多くの飛来が確認される。フジバカマを植栽し個体群を呼び寄せる。
魚類
ミナミメダカ:ダツ目メダカ科
絶滅危惧Ⅱ類
日本の固有種。水田の基盤整備などによる環境悪化により著しく減少。近年品種改良したメダカが自然に放たれている問題もある。
ホトケドジョウ:コイ目ドジョウ科
絶滅危惧Ⅰ類
ドジョウの仲間も水田の環境が変化(小川の減少)したことにより激減。その中でも本種は全国的に絶滅が懸念されている。本種は菊川水系に奇跡的に生息する。
両生類・爬虫類
トノサマガエル:カエル目アカガエル科
準絶滅危惧種
以前は普通に見かけられたが環境の悪化により近年急速に個体数が減少。本ビオトープ周辺にはまだ生息している。
ニホンイシガメ:カメ目イシガメ科
準絶滅危惧種
日本在来のカメ。かつては菊川水系に多くの生息が確認されていたが、2016年の国交省調査では確認されなかった。
現在保護活動を展開している。
植物
ツゲ(別名:ホンツゲ):ツゲ科ツゲ属小高木
静岡県レッドデータブック記載要注目種
静岡県西部の石灰岩性土壌の地域に局地的に自生。
タチバナ(別名:ヤマトタチバナ):ミカン科ミカン属常緑小高木
静岡県レッドデータブック絶滅危惧Ⅰ類
柑橘類は栽培品種が主であるがタチバナは日本固有種。
チャ(ヤブキタ):ツバキ科ツバキ属常緑低木
ヤブキタは静岡で開発された品種。味がよく育てやすい特徴があり、全国に普及した。
菊川、掛川、島田、牧之原、川根本町で行われている“茶草場農法”は茶園の周りにある草を刈り乾燥させて茶園に敷き詰める伝統農法で、サステナブルな農法は平成25年にFAO世界農業遺産として認定。
フジバカマ:キク科ヒヨドリバナ属多年草
静岡県レッドデータブック絶滅危惧Ⅱ類
秋の七草のひとつ。長距離移動する蝶アサギマダラが好んで吸汁する。
キキョウ:キキョウ科キキョウ属多年草
静岡県レッドデータブック絶滅危惧Ⅱ類
秋の七草のひとつ。自生株は減少。
カキツバタ:アヤメ科アヤメ属多年草
静岡県レッドデータブック絶滅危惧Ⅱ類
湿地に育成する多年草。自生株は減少。
