Theme.1
社内に浸透する危機意識の醸成と
変化と結果へのチャレンジ
西尾
新体制がスタートして2年目に入りました。横山社長は就任時に「健全な危機意識を持つこと」「変化を恐れないこと」「結果にこだわること」の3つのお願いを社員に向けて発信しました。この1年を振り返ると、この3つのお願いが、社内の意識改革と行動変革に影響していると感じています。何か行動を起こす際にも、これまで以上に数値目標や成果を意識して取り組むようになってきていると思います。
池田
多少大げさな表現になりますが、横山社長の就任1年目は、疾風怒濤の1年だったのではないでしょうか。取締役会ではほぼ毎回、アクシーブ®のジェネリック品対策問題が議題に挙がりましたし、連結子会社の特別損失への対応も余儀なくされました。トランプ関税を皮切りに世界経済がますます混迷しています。そういう意味で、逆風にさらされた1年だったと思います。
横山社長は、逆境においてこそ企業体質を強靱化しなければならないという明確な方針のもと、荒波の中でしっかりと1年間のかじ取りをしてこられたと評価しています。
山梨
この1年間を振り返って印象的なことは、横山社長の実直で強い意志がクミアイ化学をけん引する大きな原動力だったということです。就任時に述べられた3つのお願いに関しても、取締役会での意思決定の中で一貫しています。健全な危機意識も、社員の方々の中に伝わっていると思っています。
池田
私も印象的なことを申し上げると、危機管理をネガティブに受け止めるのではなく、それを冷静かつ客観的に捉え直し、そこからポジティブな可能性を見いだす意識改革の機会になったと感じます。例えばジェネリック品は、創薬メーカーにとって宿命的課題ですので、冷静に受け止め、ポジティブに切り返すチャレンジ精神が必要だと、経営陣の真摯に向き合う姿勢を確認できました。
危機をポジティブに受け止めることは、同時に変化を恐れず結果にこだわる意識にもつながります。変化とチャンスは、英語では1文字違いです。Changeの“g”を“c”に置き換えるだけでChanceになり、意味が変わりますね。
Theme.2
新人事制度をさらに磨き上げて
働くモチベーションを高める
西尾
この1年間の変化の具体例の一つに、人事制度の抜本的見直しがあります。30年以上にわたって硬直していた人事制度でしたが、成果を上げた従業員がきちんと評価される仕組みを整えるため、複合的昇給制度や地域限定社員制度などを導入することで、キャリアの多様性を確保し、従業員と会社のエンゲージメントを向上させる取り組みを進めています。
山梨
人間は変化に抵抗する生き物ですよね。人事制度の改革のように、自分たちに直結する改革には並々ならぬ努力が必要だっただろうと思います。3年かけて実直に人事制度の改革に、コツコツと取り組んできたことを実感しています。人事制度の改革について社内で整備を進め、3つのお願いを丁寧に伝えていくことで、さらに良い結果につながると思います。
西尾
制度の運用も大事ですね。最近では、キャリア採用も増えています。変化を恐れず挑戦する文化を根付かせるためには、権限委譲のあり方や挑戦を評価する仕組みが必要です。これらは今後の課題として明確になっていると思います。制度を磨き上げ、効果あるものにしていきたいと考えています。
池田
当社は研究開発型の企業ですが、研究開発を取り巻く環境は、ますます複雑化、高度化しており、求められる人財も多様化、高度化しています。これらに対応できる人事採用制度に近づけることが課題ですね。新しい世代の意識をつぶさに拾い上げる必要があると思います。今度の人事制度も立ち上がったばかりで、結果が出るにはしばらく時間がかかるでしょう。その点は注意して見ていきたいと思います。
山梨
普段から感じているのは、組織はバランスが大事だということです。経験豊富な社員から、若手社員、他企業での経験を経て入社された方など、ダイバーシティに富んだ人財を持つ組織で、お互いの価値観をぶつけ合い、人の意見をくみ取る素直な感覚や知見を吸収する姿勢は、新しい価値観を生み出し、イノベーションを起こすと信じています。
西尾
クミアイ化学は、離職率が非常に低いのです。離職率の低さの背景には、社員が安心して挑戦できる心理的安全性の高い土壌、いわば『居心地の良さ』があるのだと、社長との対話を通じて再認識しました。
池田
離職率が低いことは、企業組織として評価すべきことだと思います。キャリア採用が増えつつある中、前職でいろいろな仕事を経験してきた人たちが、当社の仕事の仕方や企業文化などを吸収し、これまでの経験と融合させていく文化が醸成され、組織に対してプラスに作用すると考えます。
山梨
昨年、若手の女性社員の方々と話をする機会がありました。皆さんが将来に対して不安を感じているようだったので、私自身のキャリアアップの経験から、チャンスを逃さずに挑戦し、そこで築けた人間関係や得られた知識は後の財産になったことを話しました。こうした座談会形式の場は社員同士でも開かれているようなのですが、社員の意識改革につながるように、社外取締役として役に立てればと思っています。
Theme.3
スピード感のある開発力で
成長の柱となる次世代商材の育成を
西尾
今年は、中期経営計画の最終年度となりますが、目標到達が厳しいことは直視しなければならないでしょう。
今後は、収益をけん引してきたアクシーブ®への依存構造からの脱却がテーマとなります。
アクシーブ®は卓越した商材であり、今後も混合剤や製造法などの特許を活用した知財戦略を実施すべきです。一方で、次世代商材をいかに計画的に育成するのかを議論しなくてはなりません。また、化成品事業が非常に好調ですので、成長機会を確実に捉えて、資本効率やリスクを踏まえて、投資判断もしっかりしていくことが必要でしょう。
いずれにしても、短期、中長期の視点を両立した戦略が次期中期経営計画の鍵になります。次期中期経営計画では、成長の柱を明確に示すことが求められるでしょう。今年1年が次期中期経営計画を立てるための重要な1年になると思います。
池田
考え方は私も同じです。今年が中期経営計画の最終年度であることから、原点に立ち戻り、次期中期経営計画を練り直す時期として位置付ける必要があると思っています。
近年、エフィーダ®やディザルタ®などの商材が、好調に推移していると伺っていますので、そこには非常に期待しています。
また、次世代型の農薬として微生物農薬があります。今年の春から新規微生物農薬エコアーク®の国内販売を開始します。微生物農薬はこれから成長が見込める市場です。すぐに大きな業績につながるかどうかは別にして、社会的にも微生物農薬はこれから求められる剤になると思います。
山梨
次の柱をいかに育てるのかという前向きな議論としては、西尾取締役、池田取締役のおっしゃる通りだと思います。成長戦略の観点で、クミアイ化学の優秀な人財は強みになります。
研究者の方々にお話を伺うと『自分たちが今取り組んでいることは、すぐに結果が出るものではなく、何年後かに一つ芽が出るかもしれない。その思いを持って日々の研究に向き合っている』と言います。研究者ならではの実直なモチベーションが、こういうところにあるのだと実感させられました。現場力が高い一方で、研究者の思いやモチベーションを、より言語化して発信すべきだとも思いました。
池田
一般の農薬の開発成功確率は16万分の1なのですが、クミアイ化学は7500分の1であると聞いています。明日に製品化されるものではないかもしれませんが、業界平均を大幅に上回る開発成功確率とスピードこそが、当社の真の優位性です。この『創薬の効率性』をより強力に市場へ発信し、企業価値に反映させていく必要があります。
Theme.4
若い世代も注目する農業
双方向のコミュニケーションが取れる発信を
池田
ステークホルダーの皆様に対する発信の仕方は、課題ですね。農薬は世界の食料生産に大きく貢献しています。一方で、農薬に対する社会的認識にはまだ偏見が残り、無農薬志向が消費者の中にも根強くあります。このジレンマをどう克服するかは、農薬メーカーにとっての大きな課題の一つです。
そのため、今年で14回目の学生を対象にした『食料と農業の未来』をテーマにした論文募集や2024年度から始めた高校生のための食育プログラム「食料生産に関するグループディスカッション」など、若い人たちに農薬の必要性を認識してもらう機会を積極的に提供することは非常に重要な取り組みだと考えています。
西尾
ニュースリリースを出して、一方通行の発信をするよりも、論文を出してもらったり、授業を行ったり、双方向の発信ができる取り組みは素晴らしいと思いますし、これからも続けていかなければなりません。
池田
活動は地道ですが、クミアイ化学の企業価値のよりどころになるでしょう。これからも、若い世代に働きかけることは、いろいろな形でやるべきだと思います。
山梨
農業というキーワードは、実は、今の若い世代が注目しています。「今後、農業をうちの会社に取り入れてみようと思う」と考える企業の方もいらっしゃいます。環境や食料自給、地方創生など、農業の振り幅は広いと感じています。当社の技術力や開発能力の本当の強みは、さまざまな形で派生させることができると思っています。
Theme.5
多様なリスクに対処して
企業価値向上につなげていきたい
西尾
リスク管理は企業の持続的成長を支える大変重要な経営基盤です。『為替変動リスク』『ジェネリック品の拡大』『特許侵害』『トランプ関税のような通商政策の変化』などが複雑に絡み合い、当社の経営を取り巻くリスクは重層化しています。
農業マーケットは、世界人口の増加によって食料需要が増えており、それに付随して農薬は成長市場だと世界的には見られています。一方で、長期的な目線では阻害要因として、環境保護のもと、化学農薬の使用量(リスク換算)の削減規制が求められています。将来的な成長市場として、生物農薬の対応は、リスクマネジメントの一つであると思います。当社もこの分野に投資をしていますが、これは長期的に考えても重要なポイントです。
池田
海外売上が約7割あることを考えると、地政学的なリスクもありますね。米国、南米、西半球の情勢を考えるとき、それを強みにしていくような施策を打ち出すことがあってもいいのではないでしょうか。長期的な課題ですが、そこに知恵を絞ることができれば、私も社会学の専門家として貢献できる点があると思っています。
山梨
物価や規制、国際情勢といった、自身でコントロール不可能なことへの想定幅の広さ、初動の速さ、対応力が問われていると強く感じています。
特許侵害の訴訟も、国によって対応が全く異なります。それに対処できる選択肢を持っているかが肝要だと思います。
西尾
研究開発投資をしても、すぐに成果が出るわけではありません。時間をかけて育ててきた事業の価値は見えづらいものなのです。だからこそ、何を目指しているかをわかりやすく、継続的に発信していくことが最も重要だと思うのです。当社の実力や将来性を伝えるために、ステークホルダーとの対話はもちろん、役員、社員一人ひとりが、自社の強みと方向性を理解し、自信を持って語れるようにしていくことは、企業価値向上につながると思います。
Theme.6
100年企業を目指して
社会から選ばれる企業であり続ける
池田
私の役割は、サステナビリティ経営にできる限り貢献することだと自覚しております。その意味で、当社のサステナビリティ経営は、近年順調に進展していると評価しています。申し上げたように、外部に発信し、多岐にわたるステークホルダーの皆様に認知していただく努力を、これからしていく必要があるでしょう。
今年、1949年創業のクミアイ化学は77歳、喜寿の年です。百年企業が射程に入っていますから、その先を見据えた企業のあり方を考えていきたいと思っています。百年、その先を見据えた展望を皆でつくっていきたいと思います。それが、ステークホルダーにも響いていくのではないでしょうか。
山梨
当社の強みは、優秀な人財と卓越した開発力、そして誠実な企業文化を持っていることです。これらの優位性を守りつつ、同時に進取の精神も育てています。 3年後の情勢も予測できない不透明な時代です。その中では、いかに多様な視点が経営に入って、いろいろな議論が前向きにされるかが重要になります。私がその一助となるような存在になれればと思っております。
今後のクミアイ化学が成長する未来を、ステークホルダーの皆様に発信できたらと思っております。
西尾
社外取締役として、外からの視点、中長期的視点から、当社の企業価値向上に貢献することが役割だと思っております。取締役会では、経営と財務とグローバルの観点から、戦略、投資案、リスク対応について、率直に意見を述べております。それによって、経営陣がさらに成長していくことを願っています。
池田取締役も山梨取締役も述べられているように、当社の強みは人財と研究開発力、誠実で粘り強い企業文化です。これらを活かして、クミアイ化学が社会から選ばれる企業であり続けられるよう、ステークホルダーの皆様とともに進んでいきたいと思っています。ステークホルダーの皆様におかれましては、さらなる成長を遂げるクミアイ化学の変革プロセスを注視していただくとともに、中長期的な視点でのご支援をお願い申し上げます。
