Vol. 5

オエノングループ 合同酒精株式会社 酵素医薬品工場(八戸)訪問記

2010年8月13日

冷たくも暖かい町八戸

エコホープの生産の場を訪ねて早朝の羽田をたった。眼下に広がる景色はだんだんと色彩を無くしていき、枯れ木と雪の2色の世界に変わってゆく。三沢の空港を降り、バスに揺られることしばし。辺り一面はうっすらと雪化粧。空がほんとうに青い。
青森県八戸市。
暖かいまちである。空気はピンと張り詰め、頬に当たる風は確かに冷たいのだが、まちの佇まいはどこか懐かしく、なによりかしこで声をかけてくれる人々の笑顔が暖かい。静岡の安倍川河川敷で分離されたトリコデルマ菌は微生物農薬「エコホープ」となり、今、この地を新たなふるさととしている。

酒造りが活きる高品質のエコホープ作り

エコホープは合同酒精の酵素医薬品工場にて培養から箱詰めまで一貫した生産が行われている。その培養過程は右の図の通り。最初は耳かき一杯程度の菌を徐々にスケールアップしながら培養してゆく。
今は7キロリットル(7トン)の最終釜での培養が終わり、冷却の期間。残念ながら、最終釜の様子は企業秘密のため撮影を許されなかったが、大きな釜の中で明日の袋充填を待つ「エコホープ」の息づかいが静かに聞こえてくるようであった。
エコホープは生きた菌を扱う「生もの」。微妙な培養条件が品質に大きく影響することもある。
このため、高い品質を保つには、徹底した温度管理とクリーンな環境が保たれている。培養されたエコホープは製品袋に充填されるまで外気に触れることなく、雑菌の混入が無い。ここには酒類など食品を扱ってきた会社ならではの技術が活かされる。また、温度管理に利用される冷却水は、近くを流れ八戸港へ注ぐ馬淵(まべち)川から引く。その水温は1~2℃と冷たい。
ピンと張り詰めた空気と清らかで冷たい水が、人も菌も暖かに育むのだ。

合同酒精株式会社

エコホープの生産が行われているオエノングループの合同酒精株式会社 酵素医薬品工場。
グループ名はすべてのものをお酒に変える力を持つという伝説の女神「オエノ」に由来する。
その歴史は日本で一番古いバー「浅草・神谷バー」の創始者、神谷傳兵衛に翻る。
傳兵衛がぶどうの生産から瓶詰めまで「日本国内で一貫して造りあげる葡萄酒」を志し、苦心の上日本初の本格的ワインの醸造場「シャトーカミヤ」を建設したのが今から100年余昔のこと。
以来、酒類事業を通じ培ってきた発酵技術などを利用し、現在は酵素・診断薬・原薬・健康食品をも提供しているのが合同酒精株式会社だ。
その醸造・発酵・培養技術は非常に高く、エコホープについても伝統の技と最新のテクノロジーに裏打ちされた高品質な生産を可能としている。

エコホープとは

自然界に存在する糸状菌トリコデルマ アトロビリデSKT-1を有効成分とする水稲用種子消毒用の微生物農薬です。
糸状菌や細菌が原因の病害に対して、既存の化学農薬と同等以上の防除効果を発揮いたします。
有効微生物の胞子を水に分散させた液体製剤なので、粉立ちがなく、使い易い製剤です。

  • 微生物を有効成分としたイネ種子伝染性病害防除剤です。
  • 生菌の微生物農薬ですので、特別栽培農産物に於いて使用成分回数にカウントされません。(実際の使用、農産物表示にあたっては、地方公共団体等の認証機関にお問い合わせください。)
  • 安全性が高く、環境負荷が少ない環境保全型農業に適した資材です。
  • 従来の種子消毒剤と異なる作用で、ばか苗病・もみ枯細菌病・苗立枯細菌病に高い防除効果を示し、これらの病害の同時防除が可能です。
  • 薬害の心配がなく、浸種前~催芽時までの任意の時期に使用することができます。