よくわかる!農薬のお話

「なぜ必要なの?」 「健康に悪い?」
「環境によくない?」
知っているようで知らない農薬のこと
分かりやすく紹介します!

01

農薬ってなに?

農薬とは、農作物を病気や害虫、雑草から守るために使う薬剤のこと。農作物を安定的に収穫したり、品質を維持・向上させたり、農作業の負担を減らしたりすることができます。

Q 農薬を使うのはなぜ?

農薬は、農作物の収穫量の増大や品質向上、農作業の負担を減らすために使われています。
近年、さまざまな社会的要因により、その必要性が高まっています。

世界の人口と1人当たりの農地面積

年々世界人口が増えているのに対して一人当たりの農地面積が減っていることを表すグラフ
出典:FAOSTAT、United Nations

世界の人口が増えてより多くの食料が必要になってきています。国際連合の予想によると、世界人口は2050年にはおよそ100億人に達する見込みです。当たり前のことですが、人間は食べ物がないと生きていくことができません。人口が増えると、食料がよりたくさん必要になります。食料になる農作物もたくさん必要になるということですが、農地や農家さん、農業を行える時間が、人口が増えるのと同じように増えるわけではありません。
限られた土地、限られた人数、限られた時間の中で効率よく農作物を作ることが求められています。

上のグラフを見るとわかるように、世界人口は増えているけれど、反対に一人当たりの農地面積はどんどん減っています。限られた土地の中で必要な量の農作物を生産しなくてはなりません。

日本の農業従事者の減少と高齢化

2015年から2024年の農業従事者の人口と平均年齢を表すグラフ、農業従事者の人口は2015年に175.7万人に対し2024年は111.4万人と年々減少しており、平均年齢は2015年に67.1に対し2024年は69.2と年々高齢化している
出典:農林水産省 農業労働力に関する統計
農業従事者は2015年に176万人に対し2024年は111万人となり9年間で65万人減少している図

私たちの暮らす日本などでは、農家さんの減少と高齢化が大きな問題となっていて、農作業の省力化が求められています。これまで雑草取りや害虫の駆除は、多くの人手に頼っていましたが、現在は少ない人手で、それらの作業を行わなければなりません。農作業の省力化の手段として農薬が重要な役割を果たしています。特に日本は高温多湿な気候であるため、病気や害虫、雑草から農作物をちゃんと守ってあげなければなりません。

Q 農薬を使わないとどうなるの?

農薬を使用しなくても私たちの食生活に影響はない!と考えていませんか?
農薬を使わない場合、十分な収穫量が取れなかったり、品質が落ちてしまったり、農作業の負担が増大し、
私たちの食生活や農業そのものに大きな影響を与えます。

農薬を使わないで農作物を育てた場合、病気や害虫、雑草の影響で収穫量が減ったり品質が低下したりすることが分かっています。また雑草の影響で収穫量や品質に大きな影響が出ることが分かっています。収穫量が減ると、みんなが食べられなくなってしまうかもしれないし、農家さんの収入が減ってしまいます。日本では、2024年に「令和の米騒動」が発生し、お米が買いにくくなったことは記憶に新しい出来事です。必要な量の農作物をしっかりと作ることは私たちの食生活にとってとても大事なことなんです。

農薬使用有無による収穫量の差

農薬使用有無による収穫量の差の図、お米、小麦、大豆、りんご、もも、キャベツ、いずれも農薬を使用した場合に比べて農薬を使用しない場合は収穫量が減る。りんごについては農薬を使用しない場合収穫できない。
農薬使用有無による収穫量の差の図、だいこん、きゅうり、トマト、じゃがいも、なす、とうもろこし、いずれも農薬を使用した場合に比べて農薬を使用しない場合は収穫量が減る。
出典:CropLife JAPAN

農作物をたくさん作るためには、畑や田んぼを増やすか、同じ面積の中でより多く作る必要があります。畑や田んぼを増やすためには、例えば山や森林を畑や田んぼへと変えていく森林伐採などが必要になってしまいます。農薬や肥料などを使って同じ面積でよりたくさんの農作物を作ることができれば、森林伐採などを減らすことができます。農薬を使用することは結果的に緑を守ることにもつながっているんです。

Pick up

農薬を使わなくても、農作物を育てることはできる。

家庭菜園や一部の農家さんでは、農薬を使わずに農作物を育てる人もいます。
農作物を育てるためには病気や害虫、雑草などから守る必要がありますが、畑や田んぼが広くなければ、農薬を使わないで手で害虫を取ったり雑草を抜いたりして農作物を育てることができます。

農薬を使わずに自分たちの手で手間をかけて作った野菜はなんとなくおいしく感じる気もしますよね。農薬を使っていない野菜や果物を食べたいと考える人たちもいます。
多くの農家さんが農薬を使うのは、皆さんがごはんを食べていくために、毎年たくさんの農作物を安定して作らなければならないからなんです。農薬を使用することで、効率よく安全・安心な農作物をたくさん作ることができ、私たちの食生活が守られています。スーパーマーケットに行けばいつでも新鮮で安全・安心な野菜が手に入るのは、実は農薬のおかげでもあるんです。
日本の有機栽培の取組面積は近年増加していて、2022年時点では約30.3千ヘクタールとなりました。増加傾向にあるものの、全耕地面積のうち0.7%に留まっており、多くの農家さんは農薬を使用していることが分かります。

日本の有機農地面積の割合

農薬使用栽培と有機農地の2022年の面積割合、農薬使用栽培が99.3%、有機栽培は0.7%
出典:農林水産省 – 有機農業をめぐる事情について

世界の有機農地面積とその割合

有機農地面積と有機農地割合を2000年から2023年まで表したグラフ、有機農地面積と有機農地割合共に年々増加している。
出典:FiBL & IFOAM – ORGANICS INTERNATIONAL
02

農薬の種類と役割

病気、害虫、雑草… 作物に悪い影響を与える敵はさまざまです。
農薬には、これらの敵から作物を守る役割があります。

農薬の役割

農薬は、こんな敵から農作物を
守っています

害虫って何?

おいしい農作物は害虫の大好物。害虫は農作物の葉や茎を食べてしまったり、汁を吸ってしまい品質を悪くしたり、収穫量を減らしてしまいます。

  • イネカメムシ(成虫)
  • ナミハダニ
  • トビイロウンカ
  • バッタ(幼虫)

農薬はどうやって害虫を退治するの?

殺虫剤には、呼吸をできなくするもの、成長できなくするもの、情報伝達の仕組みを壊すものなど、薬剤によってさまざまな効き方があります。
たとえばある殺虫剤は、害虫の筋肉を作っている細胞に効きます。害虫は筋肉が使えず動けなくなってしまうので、植物の汁や葉、実などを食べることができずに死んでしまいます。ほかには脱皮に必要なホルモンのバランスを崩すことで、成長を止めるものなどもあります。

雑草はなんで取り除かないといけないの?

作物は、たくわえた水分や栄養分、太陽の光を利用した光合成などによって育っていきます。雑草は、その栄養分を横取りしたり、光をさえぎったりして農作物の成長を邪魔してしまうので取り除かないといけません。

  • タイヌビエ
  • クログワイ
  • ネズミムギ
  • オナモミ

農薬がどうやって雑草に効くの?

除草剤は、雑草の芽が出ないようにしたり、育たなくしたり、枯れさせる効果があります。
植物の生長に必要な光合成を邪魔したり、植物ホルモンの作用をかく乱させたり、タンパク質や脂肪酸を作れなくしたり、細胞自体の分裂を抑えたりして、結果的に生長が止まり枯らすことができます。

作物が病気になるってどういうこと?

植物病原菌などが、空気、水、土、虫などを通じて農作物につくことで病気になります。
病原菌(カビ)が農作物につくと、農作物の体内に菌の糸を伸ばして侵入して、やがて胞子を形成して飛ばし、新たな植物について発芽する。そのようにしてどんどん生息域を増やしていきます。

  • イネいもち病(葉いもち)
  • きゅうりべと病
  • トマトうどんこ病
  • イチゴ灰色かび病

農薬はどうやって病気に効くの?

殺菌剤には、病原菌を直接やっつけたり活動しなくさせるもの、広がったり増えたりする力を抑える働きをするもの、農作物のほうの病原菌に対抗する力を強くするものなどがあります。
たとえばある殺菌剤はカビだけが持っている細胞の壁を壊します。人や動物は、もともとこの細胞の壁を持っておらず、植物の細胞の壁も違う成分でできているので、このカビだけを退治できるのです。
医薬の研究から生まれた農薬もあります。ある殺菌剤には、カビが原因で起こる病気である水虫の治療薬と同じ仲間の成分が含まれています。安全かつ効果の高い医薬品づくりの技術を、農薬に取り入れたのです。

農薬の種類を知ろう

農薬は使い道によって、
7種類に分類されます

  • 01

    殺虫剤

    殺虫剤

    農作物などに害を与える昆虫などから守る薬剤

  • 02

    殺菌剤

    殺菌剤

    植物を病気にする微生物(植物病原菌)などから農作物を守る薬剤

  • 03

    殺虫殺菌剤

    殺虫殺菌剤

    殺虫成分と殺菌成分を混ぜて害虫、植物病原菌から農作物を守る薬剤

  • 04

    除草剤

    除草剤

    農作物の収穫量、品質などに悪影響を及ぼす雑草から守る薬剤

  • 05

    殺そ剤

    殺そ剤

    農作物に害を与えるねずみ類を退治する薬剤

  • 06

    植物成長調整剤

    植物成長調整剤

    植物が成長するために備わっている機能をコントロールして、種子をなくしたり、実を増加させたり、背の高くなる植物を倒れにくくしたりする薬剤

  • 07

    その他

    その他

    農薬肥料、害虫や害獣が嫌がる臭いや成分で寄せ付けないようにする薬剤、農薬の効果を安定させるために使う補助の役割を担う薬剤など

実際に使われている

農薬を見てみよう

  • 顆粒水和剤
  • 粒剤
  • 豆つぶ®剤
  • 液剤

農家さんが取り扱いやすく、均等にまくことができ、農作物を守る効果を十分に発揮させるため、農薬には、粉、粒、液体などさまざまな形があります。農薬の中心となる有効成分に粘土などの補助成分を混ぜて、形を作っていきます。この工程のことを「製剤」といいます。
最近は、製剤技術の進歩により、人や環境への影響が少なく、省力化にも役立つものも開発されています。
クミカ独自製剤豆つぶ®剤

03

農薬って本当に
安全?

一つの農薬を作るために膨大な時間と費用がかかりますが、
一体どのような過程を経て販売に至るのか見てみましょう。

新しい農薬の開発と
安全性

  • 農薬の安全性については
    厳しい基準があります

    農薬登録に必要な試験項目は多岐にわたり、農薬としての有効性、農薬を使用する人への影響、農畜産物・水産物・飲料水などを介しての人への影響、環境や作物中での動きや土への残留、蜜蜂などの有用生物への影響、水中に生息する生物や鳥類など生活環境動植物への影響などさまざまあり、全てをクリアしなくてはなりません。

  • 健康に影響を与えない量が
    定められています

    農薬を使って作られた農作物を食べる人の安全性については、人が生涯にわたり毎日取り続けても健康に悪影響を及ぼさないと考えられる体重1kg当たりの農薬の量が定められています(許容一日摂取量)。
    また、人が農薬を短時間(24時間以内)に摂取しても、健康への悪影響がないと推定される摂取量の上限も定められています(急性参照用量)。

  • 全部の試験を突破できるのは
    エリートだけ!

    農薬には登録制度があり、環境や人、動物にとって安全だと国の機関に認められたものだけが農薬として登録され、販売することができます。
    このようなさまざまな厳しい試験や評価をクリアする化合物は、約16万個に1個。現在農薬として販売されている化合物は、全ての厳しい試験や評価をパスしたエリートなのです。

  • 農薬の開発にたくさんの時間と
    お金をかけています

    一つの農薬(有効成分)を作るためになんと10年以上もの時間と300億円以上もの開発費用がかかるといわれています。
    農薬を製品として世に出すまでには多くの段階があり、大量の候補化合物の評価、効果の確認、安全性の確認、法対応や登録申請などをしなければならないために、ここまで多くの時間と費用がかかるのです。

Pick up

人や自然に優しい「微生物農薬」

微生物農薬は、農薬の有効成分として微生物などを生きた状態で製品化したものです。もともと自然界に存在する有用な微生物などに着目して開発した安全性に優れた環境負荷の少ない農薬製品です。
微生物農薬紹介ページ

微生物農薬

農薬を使うルールを
知ろう!

農薬を定められた方法で適正に使用することは、農作物を病気や害虫、雑草から守ることだけではなく、
人々の健康や自然環境を守るためにもとても重要です。
そうしたことから、農薬を使用する農家さんが守るべき責務や、
取り組むよう努めることは法律で定められています。
これらは「農薬使用基準」と呼ばれています。

農薬ラベルの構成

農薬の製品ラベルは「デザイン部分」と表や文章のある「記載部分」から構成されています。

農薬ラベルの構成図 デザイン:登録番号、種類名、名称、成分、性状、内容量、毒物および劇物取締法による表示、消防法等による表示 記載部分:対象となる病気や害虫、雑草の範囲、使用方法、効果・薬害等の注意事項、安全使用上の注意事項など

ラベルの「デザイン部分」には、登録番号、種類名、名称、成分、性状、内容量、毒物及び劇物取締法による表示、消防法等による表示がされています。
ラベルの「記載部分」には、対象となる病気や害虫、雑草の範囲、使用方法、効果・薬害等の注意事項、安全使用上の注意事項など農薬を使用する前に読んで理解しておかないといけないことが記載されています。

購入時のチェックポイント

  • 農林水産省「登録番号」があるか
  • 作物名と適用病害、害虫、雑草名に間違いがないか
  • 使用面積に対して必要な薬量はどれぐらいか
その他確認点
  • 毒性・危険物の表示・種類名(有効成分・剤型)・RACコード
  • 容量・最終有効年月

使用時のチェックポイント

  • 使用する作物名と適用病害、害虫、雑草名
  • 使い方
  • 必要な薬量
04

人類のくらしと
農薬
の発展史

農薬は、私たちの食生活を支える上で欠かせないものですが、その歴史は長く、さまざまな変遷を経てきました。
ここでは、農薬がどのようにして生まれ、どのように進化してきたのか、その背景を紐解いていきましょう。

HISTORY

プロローグ

農薬がなかった時代

野生の植物は本来、有害物質や苦味成分などを自ら生み出して、身を守っていました。いろいろな種類の植物が一緒に生えている環境では、特定の病気や害虫が大繁殖することは少なかったんです。

しかし、人間が食料を確保するため、同じ農作物をたくさん植える「単一栽培」を始めると、病気や害虫にとってはまさに「天国」が出来上がりました。また、美味しく育てやすい農作物を選抜、品種改良していくと外敵から身を守る力が弱い農作物も出てきました。安定的に食料を確保するために人間が自ら作り出した「単一栽培」という環境は、「農作物を病気や害虫から守らなければならない」環境でもあったんです。

さらに詳しく

農薬がなかった時代、紀元前のギリシャやローマなどでは害虫を防ぐのにワインやオリーブオイルの搾りかす、植物の煮汁などが使われていました。自然由来の対策で、農作物を守る工夫がされていたんですね。しかし、それだけでは防ぐことができないことも多く、神様に祈るしかないことも多くありました。

江戸時代には、享保の飢饉(1732年)、天明の飢饉(1782~1787年)、天保の飢饉(1833~1839年)の三大飢饉が起きたことは有名です。これらの飢饉は特に被害が大きく、100万人を超える人々が飢餓に苦しんだといわれています。このような事態の発生によって、「農作物を安定的に作ること」への関心はどんどん高まっていきました。

19〜20世紀

化学農薬ができてからの農業

19世紀から20世紀にかけて化学が発展すると、化学農薬が誕生します。化学農薬とは、化学合成された物質を有効成分とする農薬のことです。
これによって、自然由来の対策よりも効率よく病気や害虫、雑草から農作物を守ることができるようになりました。
一方、昔の化学農薬には問題もありました。

さらに詳しく

第二次世界大戦が終わると、日本でも化学農薬が本格的に使用されるようになりました。戦後の日本では1000万人が餓死するといわれるほど深刻な食料不足が発生しましたが、化学農薬や化学肥料が導入され、食料不足の克服に大きな役割を果たしました。

毒性の強い成分の農薬使用により、健康被害や環境汚染という深刻な問題を引き起こしました。1962年、アメリカの海洋生物学者、レイチェル・カーソンの「Silent Spring(沈黙の春)」が刊行され、農薬による環境汚染問題が多くの人の関心を集めました。それ以降、人や環境に対する安全性を求める意見が強まり、農薬の毒性、残留性や使用法などの見直しが行われました。日本でも、残留性の高い農薬については、国による法規制や企業側の自主的な対応が行われ、製造販売が中止されて姿を消していきました。

現代

現代の農業は

現代の農薬には、過去の過ちを二度と繰り返さないために、法律で厳格な基準が設けられています。
「農作物」「農家さん」「農作物を食べる人」「環境」のすべてに対して害を及ぼさないと判断されたものだけが農薬として登録され、販売することを認められます。
農薬は、化学の力で、人や環境に対して安全で、特定の対象にだけ効果を発揮するように綿密に設計されています。ネガティブな印象を持たれがちな農薬ですが、リスクを最小限に抑えつつ、天然の防除素材以上の効果を示す科学技術の結晶なのです。

05

農薬おもしろ
コーナー

農薬の世界って、意外とおもしろい!ちょっと変わったユニークな農薬や、未来の農業を支える最新技術、気軽に挑戦できるクイズまで。知れば知るほど奥深い、農薬の世界をのぞいてみませんか?専門知識がなくても楽しめる内容を集めました。

ユニーク
農薬コレクション

これからの農薬と
農業のカタチ

QUIZ 〇×で挑戦! 農業クイズ

  • Q1 農薬を使わないでお米を育てると、お米の収穫量は半分以下になる。

    不正解 … 正解は ×

    約8割になる。8割も収穫できるなら問題ないのでは?と思いきや、日本人の主食であるお米は収穫量が少しでも減ると社会問題に発展してしまうため、毎年安定して必要な量を収穫することが大切です。

    (出典:CropLife JAPAN)

  • Q2 農薬を使わないでリンゴを育てると、ほとんど収穫できない。

    不正解 … 正解は

    リンゴは病気や害虫にとても弱く、農薬を使った場合100%収穫できるとしたら、農薬を使わなかった場合は約3%しか収穫できずほぼ壊滅状態になってしまいます。それだけにとどまらず、リンゴの木そのものも衰弱し、翌年の収穫にも影響が出てしまうため、農薬を使って守ってあげることが重要です。

    (出典:CropLife JAPAN)

  • Q3 新しい農薬(有効成分)を作るには10年以上の時間がかかる。

    不正解 … 正解は

    一つの農薬(有効成分)を作るためになんと10年以上もの時間がかかります。農薬を製品として世に出すためには多くの段階があり、大量の候補化合物の評価、効果の確認、安全性の確認、法対応や登録申請などをしなければならないために、ここまで多くの時間がかかるのです。

  • Q4 農薬がなかった時代には、ワインが農薬の代わりとして使われていた。

    不正解 … 正解は

    主に紀元前ギリシャやローマでは、害虫を防ぐ農薬代わりにワインやオリーブオイルの搾りかすなどが使われていたと記録されています。

  • Q5 生きた虫を農薬として製品化することがある。

    不正解 … 正解は

    害虫を食べてくれるテントウムシ、ヒメハナカメムシ、クサカゲロウなどは、生物農薬として活躍しています。

農薬についてもっと詳しく知りたい人は
こちら(CropLife JAPAN)

農薬の役割 害虫から守る編

農薬の役割 雑草から守る編

農薬の役割 病気から守る編

自分で動く農薬?オリジナル製剤 「豆つぶ®剤」

豆つぶ®剤は鯉のエサからヒントを得て誕生した、クミアイ化学オリジナルの水田用の省力型散布製剤です。
豆つぶ®剤は水田にまくと自分で動いて広がっていくこと(自己拡散)が大きな特徴で、粒の中に空気が入っているため、浮いたままだんだんと田んぼに広がっていきます。
まいた農薬が飛び散りにくく、軽くて優れた自己拡散性を持ち、さまざまな散布方法に適応できます。

「種なしブドウ」も農薬で作られる?

種なしのブドウは、実は最初から種がない状態で育っているわけではありません。もともとは普通のブドウと同じように、種を作る準備をしています。そこで登場するのが植物ホルモンの「ジベレリン」です。
ブドウの花が咲いたあと、まだ種が固まる前の段階でジベレリンを処理すると、種が成熟するのをストップさせることができます。すると、見た目はふっくらと実がなっているのに、中には種がない――つまり「種なしブドウ」になるのです。

この技術のおかげで、食べやすくて手間のかからないブドウが私たちの食卓に並ぶようになりました!

「リンゴやミカン」の枝を伸びにくく?

私たちがよく食べるリンゴやミカンなどの果物。たくさん枝が伸びれば、たくさん実がなると思いがちですが、実はそうではありません。枝に栄養が回りすぎると、肝心の実がなりにくくなってしまうのです。

そこで使われるのが、植物ホルモン(ジベレリン)のはたらきを調整する農薬。あえて枝を伸びにくくして、実にしっかり栄養が届くように工夫されています。おいしい果物の裏には、こうしたひと手間があるんですね。

タバコの成分が農薬として使われていた?

実は、タバコの葉に含まれる「ニコチン」は、虫にとっては強力な神経毒。昔はこの成分を使って、害虫を退治していました。また、ニコチンの成分を研究し構造を変えることで安全性を高めた「ネオニコチノイド」が殺虫剤として使われています。(※「ニコチン」は現在使用されていません)

「クローバー」が植物の成長を助ける?

四つ葉のクローバーで知られるあの植物、実はただの雑草ではありません。
クローバーの根には「根粒菌(こんりゅうきん)」という微生物がすんでいて、空気中の窒素(チッソ)を取り込んで、土の栄養分を豊かにするはたらきがあります。

このはたらきによって、周囲の植物の生長も助けてくれるんです。見た目は地味でも、農業に役立つ頼もしい植物なんですね。

「テントウムシ」は生物農薬?

可愛らしい見た目のテントウムシ。実は農業の現場では、害虫を食べてくれる“味方”として活躍しています。

テントウムシのほかにも、ヒメハナカメムシやクサカゲロウなど、害虫を食べてくれる虫たちは「天敵」として活用される「生物農薬」です。化学農薬を使わずに、自然の力で害虫を減らせる方法として、注目が集まっています。

ドローンを使った農薬散布

高齢化や人手不足が進む中、ドローンを使った農薬散布が広まりつつあります。今では、GPSやAIと組み合わせて、畑の状態を見ながら農薬をピンポイントに散布できる技術も登場しています。

さらに、センサーで病気や害虫の情報をリアルタイムに集めて、必要なときに必要なだけ農薬を使う――そんな未来も近づいています。スマート農業の進化が、これからの農業を支えていくのかもしれません。

「ターゲットだけに効く」新規作用性の農薬

「新規作用性農薬」とは、これまでと違う新しい仕組みで病気や害虫、雑草に効く農薬のことです。たとえば、今までの薬が効かなかった害虫にも効果を発揮したり、特定の雑草だけに効くなど、「選択性」が高いのが特徴です。

これにより、作物や環境への影響を抑えながら、安全に使える農薬が生まれています。未来の農業を支えるスマートな技術ですね。

植物や土の状態を良くする「バイオスティミュラント」

「バイオスティミュラント」とは、植物や土の元気を引き出す微生物や天然成分などを含む資材のこと。
農作物が栄養を吸収しやすくなったり、乾燥や暑さに強くなったりして、結果的に品質や収穫量がアップします。

近年では、地球温暖化などによる気候変動に対応するための技術としても注目されています。農薬とは少し違う、新しいかたちの“農業サポートアイテム”なのです。