画期的な製品「豆つぶ剤」はどのような経緯で開発されたのか?
製剤技術研究所の藤田茂樹室長に開発の苦労やプロセスを語ってもらいました。
私が豆つぶ剤の開発に着手したのは今から17年前の1995年に遡ります。
当時は当社もジャンボ剤やフロアブル剤の開発を進めていた時期でしたが、その頃、私は商品に直結する製剤研究とは若干距離を置いた研究室に所属していました。
新製剤研究室という視点から、「今までになかった新たな製剤」に無邪気に頭を悩ませ、休日には近くの水田の畦畔に座って一日中水田を眺めていたことを記憶しています。
今にして思えば、この精神的な余裕が良かったのかもしれません(豆つぶ剤の開発が本格化してからは全く余裕がありませんでしたが)。
ところで、水面施用された農薬粒剤は、製剤から有効成分が水に溶け出して水田に行き渡り、所定の効果が得られます。しかし、有効成分の種類によっては、粒剤から溶け出すよりも水田の水に短時間で懸濁する方がより高い効果が得られることが知られており、これを実現するには、水に浮いて水面で崩壊分散する製剤のイメージが漠然とありました。
このイメージを持って水田を眺めていた時、ふと頭に閃いたのが会社の池で飼っている大型コイ用の餌。
直ぐに試してみたくなり、早速近くのホームセンターで買い求め、知らない人の水田につい撒いてしまいました(水田の持ち主の方、ごめんなさい)。
結果はイメージ以上、魚の餌なので崩壊分散はしませんが、これが農薬製剤だったら‥。何て散布し易い形態であるか実感しました。
お手本が見つかってからは実験室で実体化するまでにそれ程時間は要しませんでしたが、これまでの農薬製剤には実績のない原料を用いること、製造したこともない形の製剤が本当に工場で生産できるのか、お客様にどうやって散布してもらうか、期待した農薬の効果が得られるか、特許はどうなっているか等々、夫々の苦労話を始めたらどれだけ誌面があっても足りないくらいです。
勿論私一人だけでなく、開発に関わった方々のエネルギーも凄まじいものでした。
豆つぶ製剤には色々な技術と情熱と想いが詰まっています。様々な壁に突き当たり、他部門からも怒られ、辛い思いもたくさんしましたが、課題を一つずつ解決していったこと、楽しかったな~~。
記事制作:2012年